P2P地震情報 開発ログ

気象庁の地震情報・津波予報とユーザの「揺れた!」という情報を共有するサービスの開発記録です。

地震感知情報の有効性と判定方法に関する調査結果

 ユーザー同士で地震の発生を伝達する「地震感知情報」に関して、いくつか調査した結果を公開します。

調査方法

  • 期間:2007年1月1日~3月25日
  • 対象:P2P地震情報において件数が3件以上と認識される地震感知情報(75回)
  • 内容:実際の地震によるものかどうか、現在の表示判定方法が十分かどうか、新しい表示判定方法の研究

調査結果 - 概要

  • 対象のうち、実際の地震によるものと推測される「有効な地震感知情報」は64%でした。
  • 次バージョンで採用される新しい判定方法の場合、誤った地震感知情報の表示をゼロにしたまま、有効な地震感知情報の表示率を25%から81%に改善できることが分かりました。
  • 現在のバージョンにおいても、「全ピアに対して1%以上の件数で表示」とすると表示率を63%にまで改善できることが分かりました。

調査結果 - 詳細

 P2P地震情報において3件以上と認識される地震感知情報について、発生日時・合計件数・最大感知度・最大割合・最大地域割合・最低地域割合をデータとして集計しました。

最大感知度
 「件数÷1件目受信からの経過秒数」で求めた「1秒あたりの地震感知情報の受信数」の最大値。3件目以降、1件受信するたびに計算してその中から最大の値をとる。
最大割合
 「合計件数÷その時の全ピア数」で求めた、全ピアの数に対する地震感知情報の件数。
最大地域割合・最小地域割合
 「北海道」「東北」「関東」「北陸甲信」「東海近畿」「中国四国」「九州」「沖縄」の8つに区分したものを「地域」とし、「各地域の件数÷件数計」で求めた「件数のうち各地域が占める割合」の値。3件目以降、1件受信するたびに計算してその中から最大および最小の値をとる。

 集計した地震感知情報は75回でした。そのうち、実際の地震と関係のない「誤報」は23%(17回)、実際の地震によるものと推測されるものは77%(58回)でした。ただし、1回の地震に対して複数回の「有効だが重複する」地震感知情報を受信することがあり、それを除いた場合の「有効な」地震感知情報は64%(48回)でした。

 それぞれのデータを調査したところ、「最大感知度」「最大地域割合」などは、誤報と有効な地震感知情報とで差がみられ、表示判定の基準として使用可能と判断しました。その上で、表示率を改善することの出来る新しい判定方法の組み合わせを作成しました。

 これらの地震感知情報について、現在のバージョンにおける初期設定・カスタム設定と、今回作成した新しい判定方法の3つにおいて、「有効な地震感知情報」あるいはそれ以外の表示がどのぐらいあるかどうかを調べました。

現バージョン新しい判定方法
(表示率)初期カスタム
有効なもの25.0%62.5%89.6%85.4%81.3%
有効だが重複する0.0%0.0%30.0%10.0%0.0%
誤報0.0%0.0%0.0%0.0%0.0%
現バージョン - 初期設定
 現在のバージョンにおいて、初期設定である「30秒間の受信数が全ピアの5%以上」の場合。
現バージョン - カスタム設定
 現在のバージョンにおいて、「30秒間の受信数が全ピアの1%以上」とした場合。
新しい判定方法
 調査した地震感知情報をもとに作成した、最大感知度・最大割合・最大地域割合の3つを使用する新しい条件を採用した場合。3段階のレベル設定を予定。

 有効な地震感知情報の表示率は、現在の初期設定では25%しかありません。しかし、新しい判定方法を採用することによって、誤報を全く表示しないまま90%近く、あるいは「有効だが重複する」も全く表示しない場合でも81%まで大幅に改善できることが分かりました。

 さらに、現在のバージョンにおいても「30秒間の受信数が全ピアの1%以上」と設定を変更することで、表示率を63%に改善できることが分かりました。

 この結果を踏まえ、有効な地震感知情報の表示率を改善するべく、次バージョンにおいて新しい判定方法を採用することにしました。